何もしない遠出が楽しい
この2, 3年くらいLCCで遠出する機会が多かった。空港から2時間ぐらいで、北は札幌、南は沖縄まであらゆる街にたどり着けてしまう。はっきりした目的はほとんどないし、めったに観光地にも立ち入らない。日中は繁華街の喫茶店でぼんやりしたり作業したり、本屋や服屋を見て回ったりする。日が暮れると、その土地の友人と食事に出かけるか、コンビニで夕飯を買い込んでホテルの狭い部屋にこもることが多い。泊まるのはたいていチェーンのビジネスホテルだ。部屋の内装はどこのホテルもほぼ同じで安心するし、大浴場がついているホテルもあって意外と居心地が良い。
帰りの便に乗ると、文庫本を一冊読み終わるか終わらないかのうちに空港に着く。遠出のあと乗換案内のアプリを開いて履歴をひらくと、見慣れない地名に埋め尽くされている。一瞬、自分がまだ出先にいるような錯覚を起こすが、それも一興。
最近凝っているのは、高速バスで適当な街に乗り付けて、そこからカーシェアでイオンとスーパー銭湯に繰り出す遊びだ。街で一番大きなイオンのフードコートで昼食を取りつつ隣の人の話に耳を傾ける。飽きたら店内をぐるぐる周って、それも疲れたらスーパー銭湯に向かう。ちなみに、フェイスタオルをスーパー銭湯に持参するとタオル代を取られずに済む。
イオンもスーパー銭湯も日本中どこにでもあるところが良い。デタラメに選んだ目的地でも探せばこの2つはだいたい見つかる。あと周りの人と距離を置けるところも良い。イオンを一人で周っていても誰にも咎められないし、スーパー銭湯はそもそも一人客がメインだ。一人でぼんやりしていても何も言われず、しかも人との物理的な距離が確保されている空間は心地良い。
そういえば、むかしから観光に対して意味を見出せずにいた。修学旅行や家族旅行で、自らの属性を引きずりながらいつもと違う場所に放り込まれること、観光者としてまなざされることがなんとなく辛かった。慣れない土地で慣れないことをすることが苦手なのもあるだろう。だから、遠出先でしっくり来る時間の使いかたを知って、ちょっと生きやすくなったなと思う。
あと、いろんな街をふらつくようになって、初めての街でもどこに何があるか見当がつくことが増えた。このぐらいの規模の街は病院や商業施設があのあたりにあって、役所は駅から歩いていけるところにある、みたいな。それが分かると、休みの日どこに人が集まるのか、みんなどこに住んでいるのかなんてことにも想像が働く。もちろん地域差はあるわけで、この差はなぜ起こるのだろうと考えるのもまた別の楽しさがあって良い。
こういうお金のかからない遊びを少しずつ増やしていけたら、生きていくのも多少は楽しいのかもしれない。良い感じに人生をやり過ごしていきたい。
- 作者: ジョンアーリ,ヨーナスラースン,John Urry,Jonas Larsen,加太宏邦
- 出版社/メーカー: 法政大学出版局
- 発売日: 2014/08/25
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