涅槃

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ラブホのバックヤードを見学した

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この2, 3年ぐらいラブホテルをテーマに本を作ったり卒論を書いたりしていたら、ついに中身を見せてもらう機会をいただいた。以下、かんたんなまとめ。

場所:渋谷
時間:平日の夕方前。渋谷のラブホ街では一番暇な時間帯らしい。

フロントと客室整備とでパートが分かれている

見学したホテルではフロントと客室整備の2チームに分かれて働いていた。詰所も2つに分かれていて、フロントは1階玄関横、客室整備の人は客室の横にある待機部屋(隠し部屋っぽい作り)。シフトも別々に組まれていた。ちなみに、フロントの仕事は夜勤があるものの女性に特に人気で、募集をかけてもすぐに埋まってしまうらしい。

利用者の動きが手に取るように分かる

ラブホテルはプライバシー確保の観点から、従業員と利用者が顔を合わせなくても済む作りをしている。逆に言えば利用者の動きが見えづらいし、そのまま営業していると防犯上あまりよくない。なので、共用部に死角ができないよう防犯カメラが設置されていたり、客室ドアの開け閉めなどがフロントからモニタできたりする工夫がされていた。面白いと思ったのは、室内のテレビで見られているコンテンツ内容をリアルタイムで管理・集計できるシステム。防犯上というよりはマーケティング観点で活用しているとのことだった。

やっぱり法規制が厳しい

中の人に解説をしてもらいながら館内を周っていて「この部分は法律でこうなっていて〜」という言葉をよく聞いた。卒論を書いていても思ったことだけど、ラブホテルをやっていくうえでクリアしなければいけない法規制は本当に多い。旅館業法や風営法だけでなく自治体の条例もあるし、食品衛生責任者や防災管理者なども置く必要がある。客室に窓を設置しないと旅館業法でアウトだし、いわゆる大人のおもちゃを置くにも風営法の営業指定を受けなければならない。網目のようなルールに現場がどう対応しているのか、リアルな事情を見聞きしてテンションが上がった。

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その他雑感

・わりと長く関心を持ち続けた自分ですら、舞台裏が見えない・想像できないことから来る不気味さをラブホテルに感じていた。今回、働く人や動く機械の姿を目にして、その印象が変わった。
・基本、ラブホテルは大きな設備を導入してぶんぶんと回す商売だけど、ところどころブリコラージュ的な創意工夫が見えて良かった。「性愛空間において"繕う"ということ」みたいなテーマで短い論考が書けそう。
・以前から業界誌を読んだり中の人と話したりしていて、健全っぽい印象を業界に持っていた。今回もそのイメージは覆らなかった。業界団体や監督官庁がいる、周縁にたくさんの取引業者もいる。日本の中小企業集団の一つとして業界を捉えると面白そうだなと感じた。
・とはいえ、ラブホへのイメージは一般的にあまり良いものではないと思う。そのネガティブイメージの正体は何か、何に起因するものなのか。新たに興味が湧いたので、卒論が片付いたら調べてみたい。

(写真はすべて今回の見学とは異なるホテルでの撮影)